2021年8月28日土曜日

CSPPという選択肢 ⑥

IVCをCSPPで組む

DACのIV変換に興味があって、前にはオペアンプを使ったIV変換の実験をしてみました。
結果は上々できちんと実用になるものでした。
そうしているうちに、ディスクリートでIV変換を試してみたくなってきました。
そうです、単なる興味でしかないのですが・・・・

そこで試してみたのがこんな回路です。DACチップの電流出力を受けてIV変換を行いついでにヘッドフォンくらいは駆動してしまえといったちょっと強引なそしてシンプルな回路構成です。
電源電圧は6Vとかなり控えめにしました。お試しの回路なので、熱安定やオフセットの安定を確認するためにあまり大きなコレクタ損失を伴わない定数です。

この回路の出典は、こちらのページ(のんびり自作オーディオ)にあったものです。それをほとんどそのまま真似させてもらいました。
変えたところは、出力段に手に入りにくいMOSFETじゃなく、中電力トランジスタを利用したことです。原典の2SK1056は温度補償が殆ど必要ないらしいのですが、トランジスタの場合はそうもいきません。
ベース電圧は2mV/1℃の変化がありますので温度とともにどんどんコレクタ電流が増えて最終的には壊してしまいかねません。なのでなにかしらの温度補償が必要です。
今回はバイアスを決める定電流回路のJFETを正の温度係数領域で使うことにしました。周囲の温度が上がると電流が増えてトランジスタのベース電流を奪いコレクタ損失を下げる方向に働きます。
さて、JFETはバイアスが深くなってIDが0になる電圧+0.6Vあたりで正の温度係数から負の温度係数になります。なのでGmが大きくバイアスが浅い品種ではどの領域で使っても正の温度領域で使うことになります。
なので、まずは定電流回路の検討を行いました。(R25の所へは1kΩの多回転半固定抵抗を接続し後ほどアイドル電流の調整用とします)
この部分です。JFETはGmが比較的大きい2SK170BLを使用します。正規品はとっくにてにはいらなくなっていますが、おそらくパチモンがAliexpressなどでお安く手に入ります。偽物かもしれませんが定電流に使うのであまり気にしないことにします。
今回手に入れたものはIDSSが9.8mAていどのものでした。

データシートをみると
IDSSが10mAでドレイン電流が0になるVGSがー0.8Vですのでそこから0.6V浅いバイアス以下で使えば正の温度係数となります。なのでVGSはー0.2V以下ならばOKです。そして必要なID:今回は800μA程度のIDを用意しますのでVGSはー0.6Vとなり正の温度係数領域での使用となります。
そして、一般的にJFETは定電流特性を保つのにTR利用の定電流回路より多くの電圧を必要とするとされています。今回は電圧を得るのが難しく、低い電圧で組むことになるので定電流特性を得ることができるのかを確かめてみました。

VDSとIDの関係の実測です。
VDSが0.5V以上であれば定電流特性は保たれているようです。
ということは0.5V+0.6Vで1.1Vが定電流回路として最低必要な電圧ということになります。TRで作る回路と遜色ない電圧で定電流回路を組めますね。

2SK1056ではVGSが2Vちょっとなのでそれを定電流回路に使えますが、トランジスタではVBEが0.65Vなので必要電圧(1.1V以上)に届きません。仕方がないので抵抗で分圧してかさ増しすることにしました。1kΩと3kΩがそれです。

温度特性は、ざっと+1℃あたり+5μA程度でした。まぁ指で押さえて体温と同じまで温度をあげた時の電流値と室温時の電流値で算出しただけなのでまったく正確ではありませんが(;'∀')

室温30℃で0.881mA。VGS-0.393V

36℃で0.888mA。VGSー0.396V

これで一回実験してみることにします。

それにしても、CSPPはなかなか動作をイメージすることが難しいですね。さて、うまくいくのでしょうか?
ふたつのフローティング電源は、実験なので電池としました。
1kHzでー6dbの時、47Ω負荷で出力電圧は1.49Vになりました。
出力段のアイドル電流は61mAです。

歪率は
THD+Nで0.039%となりました。
きちんと動いているみたいです。
一応シミュレータで試したとはいえ、なかなかポテンシャルがありそうな感じ。


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